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2009.02.06

彼方が、好きです。

泣けなかった。
泣けばいいのに、泣けなかった。
たぶん、理由は簡単で。ああいった事態を経験するには、私は若すぎたんだと思う。だってまだ漢字なんか少ししか書けなくて、本なんて絵本しか読めなくて。普通に、ううん、多分少し特殊だったけど、弟の世話をしながら、ご飯の作り方も少しずつ覚えていって、毎日学校に行って、それでも、知らないことだらけで。
たぶん、若くなくても、多分泣きわめいて、叫んだはずなんだ。
あんな光景、誰だって怖いはずだから。
だからこそ、若すぎて幼かったからこそ、泣けたはずなのに。誰かに助けを求めてもよかったのに。
あの頃の私には、どうしようもなかったんだよ。
どうしようもなくて、やっぱり、どうすることも出来なかった。
そのころの私が唯一、唯一したことは今も、私を苦しめている。
いくら忘れようとしても忘れられない。
逃げきろうとしてもすぐに追いつかれてしまう。
自分で都合いい真実をでっち上げ、そしてそれは他人の意思で改変されたものと言い聞かせて。原因を押しつけ、無視して、否定して。平穏な日々を手に入れたと思いこみ。立ち向かうことなどできない亡霊におびえて。それでも見ないように、気づかないように自分を嘘で固めて。
そうやって少しずつ育っていた私は、あのときのような“悪魔”だったんだよ。
たぶん、こうやって理性を持って手紙を書いている間でも、私は心のどこかで確実に、あなたを騙そうと、こうも狂ってしまった私の人生を、あなたの死で元の戻してしまおうと、考えている。危ないからね。できれば、こないでほしい。
無理だよね。
私がこんな手紙であなたを呼ぶんだから、あなたはきっとくるよね。きっと、心の優しいあなたはきっと来てしまう。馬鹿だね、お人好し。そんなのだから遅刻しちゃうんだよ。テストもサボって、先生に怒鳴られるんだよ。他人の失敗なんて無視すればいいのにね。一緒になって謝るなんてね、珍しいよ。きっとあなたは騙される。その相手が私じゃなくても、きっとそのうち誰かにだまされるよ。私の勘、当たるからね。
もし、私の所に来るのなら、なるべく準備して、なるべく死なない方法を考えてきてください。

ああ、手紙ってこんなに書いてて悲しいものだっけ?
目から涙が止まらなくて、文字がにじんでしまいます。
読みにくくてごめんね、ごめんね、間宮君。

私はあの時、死んでしまった。
いや、あの時順也だけでも逃がして、私も一緒に死ぬべきだった。
いや、順也も一緒に死んでいれば誰も傷つかずに終わっていた。
私の家族の壊れた一生で終わっていたはずなのに。
いや、私の嘘はここまで気づかれなかった。
あなたが、間宮君がいなければ私は今苦しんでいないんだ。
泣けなかった。
泣けばよかったのに、泣かなかった。
これを間宮君が読んでくれていることを願って、私は真実を書きます。
私は笑いました。
首から噴き出した血の海の中で、真っ赤に染まりながら、嬉しくて嬉しくて嬉しくて。
今も笑っています。
みんな消えてしまえばいいと、思って。
笑って、います。
笑って。
あなたを待っています。
間宮君。
私はあなたが世界でいちばん……


Immature Puzzles.
vol.1
「壊れた彼女と傷持ち少年」


Posted at 19:53 | Immature Puzzles. | COM(0) | TB(0) |
2009.02.06

introduction...



物語の主人公には“この人生で何か一つ、死ぬ前に成し遂げたい事”があった。

多くの人はそれを“人生の目標”だと思い、納得するだろう。
多くの人はそれを“人生における生きがい”だと思い、納得しただろう。

それは大多数の人々においては正解だった。
だが、主人公にとっては不正解だった。

多くの人にとって、“この人生で何か一つ、死ぬ前に成し遂げたい事”の具体的な概要は何かと聞くと。

ある人は“幸せな家庭を気付きあげる事”であり。
ある人は“努力して高い地位へと上り詰める事”であり。
ある人は“史上最高の芸術作品を作り上げる事”であり。
ある人は“自分の夢をかなえる事”であり。
ある人は“世界に変革を起こす事”であった。

それは大多数の人々においては正解だった。
だが、主人公にとっては不正解だった。

物語の主人公にとって、それは何かと考えるならば。
“この人生で何か一つ、死ぬ前に成し遂げたい事”は人生における目標でも、生きがいなどでもない。
“この人生で何か一つ、死ぬ前に成し遂げたい事”とは、“存在する意義”だった。
そして、その概要は幸せな家族でも、地位でも、名誉でも、夢でも、大義でもなかった。

それはたった一つの事から生まれた、純粋な愛情。
そして月日を流れて変革した、純粋な悪意。


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2008.12.05

ちょっと報告。

何やらFC2小説ができたようで。
今試しに昔の短編を載せてみました。

こちら

本当はこっちに小説は書いていこうかと思っていたのですが、どうしようか悩み中。
なので今週は少しお休みさせてください、ごめんなさい。
来週はイクトミと新作のはじめの方をUP予定。

おたのしみにー。
Posted at 12:19 | 著者近映。 | COM(0) | TB(0) |
2008.11.27

the after story. 〈one〉

-終わりの物語-



結果的に、青年は世界を救った。



世界、と言っても惑星ほどのものじゃない。
少年の行いに喜ぶ民衆などはいないし、彼の行いを憎む者もいない。
世の中が良い方向にも、悪い方向にも変わったわけではない。
もちろん彼の地位が上がることはないし、彼を誉めたたえる人間などは皆無だ。
世界はそのまま、何一つ変わりなく動いている。
では、彼はいったい何を救ったと言うのだろうか。
彼の家族か。
彼の友人か。
彼の同僚か。
彼の恋人か。
答えはそのどれでもなく。
しかし、そのどれにも当てはまるものだった。


彼は、一人の少女を救った。


そう、世界とは。
“少女”の世界のことだった。
彼が救ったのは少女の持つ世界。
少女が感じ、考え、触れ、見る世界。
そんな、青年にとってはどうでも良いものを救ってしまった。


それはあらかじめ設定されていたようなもの。


彼は偶然にも少女の世界に干渉し、その結果彼女の世界を変えざるを得なかった。
彼は必然にも少女の世界に干渉し、その結果自身の世界を変えられていた。
彼は望めなかった。
彼は望まなかった。
彼は奪われた彼の世界を、“それ”を取り戻したかった。
彼は“これ”を望んではいなかった。
彼は最初の一手から最後の一手、その手前まで。
自分の求める結果を望んでいた。



そして今、彼の目の前にはその“結果”が映っている。


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2008.11.21

一言。

−1−

「結局さ」

目の前で少年が手に持ったバーガーを齧りながら言う。

「もふもふ……練習あるのみって事じゃないの?」
「だよね……」

暗く、気落ちした私、鳴守時雨(なるかみしぐれ)は手に持ったポテトを弄びながら、表情そのままのテンションで答えるしかなかった。
まったくもってその通りだったからだ。


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